契約前に要チェック!「公簿売買」と「実測売買」どちらを提案すべき?土地家屋調査士が教える判断基準

不動産の売却依頼(媒介契約)を受けた際、あるいは買主様へ重要事項説明を行う際、必ず直面するのが「この土地は『公簿売買』にするか、それとも『実測売買』にするか」という選択です。

売主様からは「測量代を節約したいから公簿売買で進めてよ」と言われ、一方で買主様からは「本当にこの面積があるのか不安だから測ってほしい」と言われる。
営業担当者様にとって、この両者の板挟みになり、どちらで契約を進めるべきか頭を悩ませるケースは非常に多いのではないでしょうか。

結論から申し上げますと、土地家屋調査士の視点から見れば、「すべての土地を実測売買にすべき」とは限りません。しかし、「安易な公簿売買」は将来の深刻なクレームや損害賠償リスクを抱え込むことになります。

この記事では、愛媛県松山市の土地家屋調査士事務所であるKEY測量登記事務所が、プロの不動産営業マンの皆様に向けて「公簿売買と実測売買の適切な使い分け」と「判断の基準」について詳しく解説します。

そもそも、なぜ「公簿面積」はズレているのか?

「法務局に登記されている面積(公簿面積)なのだから、国が保証している正確な数字だろう」と一般のお客様は考えがちです。
しかし、実務に携わる皆様であれば、「登記簿の面積と、実際の面積(実測面積)が違うことは珍しくない」という事実をご存知かと思います。

では、なぜこれほどまでに面積がズレている土地が多いのでしょうか? 主な理由は以下の2つです。

① 明治時代の「地租改正」の名残り(縄伸び・縄縮み)

現在法務局に備え付けられている「公図(旧公図)」や面積の元データは、驚くべきことに明治時代の「地租改正」の時に作られたものが数多く残っています。当時は税金を安く申告するために、わざと実際の面積より小さく測ったり(縄伸び)、逆に大きく測ったり(縄縮み)することが横行していました。また、測量技術自体も「縄」を使って測るなど、極めてアバウトなものでした。
この場合、面積のズレは数十㎡から大きいときは100㎡以上大きくなることもあります。

② 昭和の高度経済成長期の「分譲地」の罠

松山市内でもよく見られる、昭和40年代〜50年代に開発された古い分譲地。当時の測量技術(平板測量など)は現代ほど精度が高くなく、また、一概には言えませんが図面によっては信ぴょう性が低いものがあるため注意が必要です。地積測量図が法務局に残っていたとしても、当時の図面通りに現地の境界標が復元できず、結果的に面積のズレが生じることがあります。

このように、公簿面積はあくまで「過去のある時点での(時に不正確な)記録」に過ぎません。
この大前提を売主様・買主様にしっかりご理解いただくことが、トラブル防止の第一歩となります。

「公簿売買」と「実測売買」の特徴とリスク比較

では、改めて2つの売買方法のメリット・デメリットと、営業担当者様が抱えるリスクを整理してみましょう。

種類 内容とメリット デメリット・営業リスク
公簿売買 登記簿の面積を基準に価格を決め、後から実測して面積に増減があっても代金の清算を行わない方法。
【メリット】測量費用や期間を省け、スピーディに契約・決済が進む。売主の費用負担が少ない。
【営業リスク:高】
購入後、買主が家を建てるために測量したら「聞いていた面積より狭く、希望の家が建たない!」と判明した場合、「なぜ事前に調査しなかったのか」と仲介業者の説明義務違反(調査不足)を問われる大クレームに発展する危険性があります。
実測売買 土地家屋調査士による測量(境界確定)を行い、実際の面積に基づいて代金を清算する(または単価を掛ける)方法。
【メリット】境界が法的に確定するため、買主は安心して建築計画が立てられ、将来の隣人トラブルも防げる。不動産価値が最大化する。
【営業リスク:低】
取引の安全性は極めて高い反面、測量費用(数十万円)と期間(1〜3ヶ月)がかかる。また、お隣がハンコを押してくれない(境界確認不調)場合、契約が白紙になる(決済が飛ぶ)リスクがある。

調査士が教える!どちらを提案すべきかの「判断基準」

上記の特性を踏まえ、目の前の物件に対してどちらの売買方法を提案すべきか。土地家屋調査士の視点からは、以下の基準で判断することをおすすめします。

🔴【実測売買】を強く推奨すべきケース(原則)

  • 松山市内の市街地・住宅密集地(坪単価が高いエリア)
  • 買主が「建物を新築する」ことを目的としている場合
  • 過去の地積測量図が存在しない、または明治時代の旧公図しかない場合
  • 建ぺい率・容積率がギリギリで、数平米の誤差が建築計画に影響する場合

市街地など坪単価が高いエリアでは、わずか数平米のズレが数十万~百万円の価格差を生みます。また、買主がマイホームを建てる場合、後から「面積が足りなくて家が建たない」「お隣のブロック塀が越境していて着工できない」となれば、仲介業者の責任問題に直結します。市街地の宅地売買においては、「境界確定測量を入れた実測売買」が絶対の基本(防衛策)とお考えください。

🔵【公簿売買】でも許容される(提案可能な)ケース

  • 広大な山林や原野、市街化調整区域の農地など(坪単価が極めて安いエリア)
  • マンション(区分所有建物)の売買
  • 親族間や隣人同士など、当事者間で土地の状況を熟知している売買
  • 最近(平成17年の不動産登記法改正以降)に、既に境界確定測量が行われ、精度の高い地積測量図が存在する場合

広大な山林などを実測売買しようとすると、測量費用が土地の売却価格を上回ってしまう「費用倒れ」になる可能性があるため、公簿売買(現況渡し)とするのが現実的です。ただしその場合でも、契約書や重要事項説明書に「公簿面積と実測面積に差異が生じても異議を申し立てない(代金清算しない)」旨の特約条項を必ず明記し、買主に十分な説明を尽くす必要があります。

「公簿売買」を選択した場合でも、測量が必要な理由

「よし、この物件は山林で坪単価も安いから、公簿売買で契約しよう。これで測量は不要だ!」
……と安心するのは少し危険です。

公簿売買はあくまで「面積の増減で代金を清算しない」という金銭的な取り決めに過ぎません。「対象となる土地がどこからどこまでなのか(明示義務)」という法的な責任が免除されるわけではないのです。

買主様から「大体でいいから、どこまでが私の土地になるの?」と聞かれた際に、「多分あの木のあたりから……」と曖昧な説明で引き渡してしまうと、将来買主がお隣と境界トラブルになった際、「仲介業者の説明不足だ」と巻き込まれる可能性があります。

💡 第3の選択肢:「公簿売買+現況測量」の活用

そこでおすすめなのが、全員のハンコが必要な「境界確定測量」までは行わず、土地の現況(ブロック塀や既存の杭など)を測って図面化する「現況測量(げんきょうそくりょう)」をセットで行う方法です。
KEY測量登記事務所では、ドローンを活用した広範囲の現況測量を得意としています。公簿売買であっても、ドローンの空撮画像付きの現況図面を買主に提示できれば、「ここからここまでが対象地です」という説明の説得力が劇的に上がり、取引の安全性を担保することができます。

ドローン測量のイメージ

まとめ:営業マンの「防波堤」として調査士をご活用ください

不動産取引において、土地の境界や面積に関するトラブルは、後から修復することが最も困難で、かつ賠償額が大きくなりやすい致命的なリスクです。

私たち土地家屋調査士は、単に図面を引く作業員ではありません。
不動産営業マンの皆様が、「安全に、そして自信を持って契約を進めるための防波堤(リスクヘッジのパートナー)」です。

愛媛県松山市を中心とした四国圏内で測量・登記を行うKEY測量登記事務所では、「この物件、公簿と実測どちらで進めるべきか迷っている」「売主様への測量の提案(説得)を手伝ってほしい」といった、契約前の初期段階からのご相談も大歓迎です。

ドローン測量をはじめとする最新技術と、法律・登記の専門知識を駆使し、貴社のスムーズで安全な不動産取引を強力にバックアップいたします。